思うように資金調達ができない方へ -2330ページ目

地方間格差への対策

前回の続きですが、資金調達の難易度と選択肢に、残念ながら東京と他の地域では地域間の格差があることは述べたとおりです。
銀行など金融機関は、このことを表向き否定するかもしれませんが、10年間資金調達のお手伝いをしていて、このことは本当に痛切に感じています。

ただ、ある一定の規模(事業内容にもよりますが年間売上10億円以上)を超えると、また違った可能性が出てくるのですが、特に間接金融での資金調達の必要な、会社設立から年間売上高3億円位までの、会社が成功するかどうかの大切な時期に、地方間格差があることはとても深刻なことと思います。

弊社でも、いくつもの地方の会社に無担保融資をお手伝いした実績がありますが、成功した企業を整理すると次のような結果になります。

・本社所在地が下記の地域のような、都市銀行の支店や拠点から近い場所にある。神奈川県、埼玉県、千葉県、札幌市、仙台市、大阪市、広島市、福岡市
・事業内容にオリジナリティーがあり、事業成功への具体性が明確である。
・直前期決算で年間売上高が最低でも3億円以上計上している。
・東京23区の、千代田、中央、港、渋谷、新宿、目黒など比較的都心に会社の支店があった。
・顧問税理士のチェックシートの添付があった。

まだまだ他の要因もありますが、主なものはこんなところです。

この中で、苦肉の策ではあるのですが、多額の融資を必要とする事業の場合は、融資を受ける最低6ヶ月以上前に、支店を東京の都心部に持つようにお薦めしています。
なんだくだらない方法と思われるかもしれませんが、この方法は非常に効果的で、数十件この方法でお手伝いができたのですから、経費がかかりますが
多額の融資が必要な状況であれば、馬鹿にならない方法だと思います。
ある業種ではこのような動向が顕著なので、実行している会社は結構多いと思われます。
開設する支店の最低条件や、立地する場所によっても融資の可能性が違ったりするのですが、このあたりはまた別の機会にしたいと思います。

結構その地域では有名な企業ですので、所在地や業種などは架空の話にしますが、実際にあった実例をお話します。
ある地方の人口100万人以上の都市に本社があり、店舗はその都市とその周辺、あるいは近県にあるA社の案件です。
当時A社は売上高は約120億円、経常利益は数千万円、ただ自己資本比率が5%弱。(店舗を急激に、しかも主に土地建物を所有で拡大してきたことが理由)当初取引を希望されていた某都市銀行のA社の本社がある都市の支店(現在は支店と言わない融資業務を主な業務にする空中店舗が多いのですが、馴染みのある支店という名称を使っています)に打診したのですが、多分格付けが良くないのが理由だと思いますが、ほとんど門前払いに近い形で断られました。

この会社は他の都市銀行とは既に融資残があったり当座取引があったため、(銀行のルールで、同一行内の2支店と取引ができないという項目がある)、打診して断られた銀行にだけ新規に打診できる状況でした。
やむを得ずリスク覚悟で、東京の渋谷区に支店を開設してもらいました。
もちろんこの支店の目的も必ず融資を受ける際に説明が必要ですので、この会社の将来的な営業、財務などの戦略拠点として位置づけ、できるだけ最低誰か1名は東京支店内にいるようにアドバイスしました。
この案件の場合は6ヶ月はかからず、支店開設の3ヵ月後に、東京の渋谷に近い銀行の支店から、無担保で2億円の融資を受け、現在はメイン銀行になっており、他行からの借換も含めて約15億円以上の融資を受ける状況になっております。おまけに現在は監査法人とも契約し2年後の上場に向けて、準備をしています。

このように絵に描いたような成功話はめったにないのですが、本当に東京支店開設作戦は、現時点までは成功の確率が高いことは事実なので、多額の融資が必要と思われる会社の経営者の方は検討されたら良いと思います。

次回も公的資金には進めず、地方都市の会社の直接金融のことなどのお話しをしたいと思います。

コンサルティングの現場から 地方間格差

2/18

今日は公的資金の資金調達のことを書こうと思っていましたが、昨日ご相談に来られたお客様が、典型的な資金調達の一つの問題点を語る案件であったので、今日は東京以外の地方の会社の資金調達の難しさについてお話をしたいと思います。

ある地方でスポーツクラブを数件経営している社長さんの案件です。
スポーツクラブの施設建築資金として20億円ほどの融資を、地元の銀行、信金、ファイナンス会社など7ヵ所から受けていて、この融資の融資期間が設備資金にもかかわらず、3~7年と短いため、元金返済をすると、日常的に資金繰りが忙しく、融資期間を長く貸してくれる金融機関への借換を、できれば一つか二つの金融機関に集約できるように手伝って欲しいと言う依頼でした。

決算書を拝見すると、売上も利益も増加傾向で、融資期間を長くすることで、安定した経営になることは一目瞭然で、希望されている借換はぜひした方が良いと私も確信できる案件です。

このスポーツクラブが東京23区に立地していれば90%、首都圏・大阪・名古屋で80%、京都・神戸・福岡などの一等地で50%くらいの確率でお手伝が可能で、我々のビジネス的な本音を言えば「美味しい」案件と言えます。

ところが今回の案件のスポーツクラブの所在地が決して人口が多くない、典型的な地方都市、それも都市銀行の支店も一つもない都市に立地しているため、現時点のままではかなり難しい、確立で言えば10%以下の確率でしか、お手伝いのできない案件となってしまいます。

まずこのような案件の場合は、財務内容や事業内容を参考にして、大体次のような順番で資金調達の可能性を考えます。

①既存の金融機関を整理する形で、条件が良い(融資期間が長い)1つか2つの金融機関に集約できないか? 
今回の場合は既存の金融機関が全て、金融機関自体の業績が悪いので×。

②新規の金融機関で借換ができないか?
まず都市銀行を検討。
今回のような場合は都市銀行を検討します。
一部借換とは言っても、本件では最低 2億円程度以上の融資でないと意味がないので、ボリューム的に新規だと地銀や信金では難しく、都市銀行でできないかを検討します。
もちろん20億円全額の借入ができれば満点ですが、長期間での借換を前提に、まず都市銀行との接点を持てないかどうかを検討します。
今回は、スポーツクラブの所在地が、微妙に都市銀行の店舗から遠いので、この会社の規模から言って90%×の可能性が大です。

③不動産担保ローン専門のファイナンス会社で検討する。
不動産担保ローン専門のファイナンス会社からの借換が、このような案件の場合の本命です。理由は、このスポーツクラブの場合も、装置産業であるため、固定資産の額が過大で、自己資本率が高くなく、一部短期借入金で固定資産を購入しいる部分もあるので、低い格付けになると思われます。
ですから、会社の格付けよりも不動産価値に重点を置くファイナンス会社からの借換が非常に現実的な方法です。
ところが、「不動産の見方」でも書きましたように、東京一極集中のため、今回の所在地では、担保評価が非常に低く、さらに融資の可能な額の掛け目も低いため、現在の融資の借換のためには、評価不足の分に対して現金の用意が必要となり、今回の場合は×。

④他のファイナンス会社を検討
銀行と同様な審査基準で案件を検討するファイナンス会社への打診になるのですが、銀行より若干とも格付けの基準が甘いものの、このスポーツクラブの財務内容だと確率は10%未満だと思われます。
このファイナンス会社は金利も地銀並みに金利も低いし、全国どこの地域でも原則対応可能なのですが、地銀や信金以上の財務内容を求めるので、多分難しいと思われるわけです。


⑤商工ローン系ファイナンス会社
このあたりになると、可能性は高くなりますが、金利が15%程度、おまけに社長以外の保証人をつけろとか、共同担保をあるだけ出せとか、かなり悲惨な条件になってきますので、むしろ現状のままの方が良いので、借換には不適切な融資と言わざるを得ません。

このように、結局このスポーツクラブの社長さんは、地方都市に本社と店舗も立地しているだけで、資金繰りを劇的に改善できる機会をなくすことになる訳です。

少し長くなりましたので、次回もこの続きを、特に大した手段は提案できないのですが、それでも地方に本社がある会社に何件も数億の無担保融資をお手伝いした経験がありますので、お伝えしたいと思います。
  

粉飾決算について

2/17

ここ数年都市銀行が中小企業に対して、無担保ローンを積極的にサービスするようになったのは、大変良いことと思います。
三井住友、UFJ、みずほ、東京三菱の順に順次導入されてきました。

銀行にもよりますが、債務超過でなく、3期分の決算書を提出でき、納税を完納していて、代表者など役員に金融上のトラブルがなく、取り扱う銀行の支店や部署の近隣に所在する企業に対しては、概ね月商の1~2ヶ月を融資するようになったわけですが、この良い傾向を逆手にとる悪徳の輩も多く、税務署の受印のある税務申告書からBS、PL、勘定科目明細まで全てを作り直すような会社、あるいはこれをサポートするコンサルタントまで現れ、けっこう銀行の間では問題になっています。

弊社にも、残念なことですが、相当数の粉飾決算案件が紹介されてきたことがあります。
もちろん私どもでも怪しいと思う案件については、チェックしお断りしていますが、我々のチェックをパスして銀行に打診したこともあり、本当に残念なことですが、融資後粉飾の分かったケースも数社あります。

今までの経験では、我々のチェックを掻い潜っても、銀行のチェックで99%見抜かれていますし、融資後1年以内に指摘され、未来永劫銀行取引が難しくなって倒産した会社も多数見てきています。

絶対に粉飾決算はしないことです。社長の方々は資金繰りが厳しくなったり、ビジネスチャンスが大きい新規事業を目の当たりにすると、後先を考えず、粉飾決算の誘惑に負けるのでしょうが、よほど無能な銀行の担当者か、業務に対するモチベーションの下がった担当者でない限りは100%チェックできています。
上記数件融資後に粉飾の分かった案件を取り扱ったのは、名前は出せませんが、特定の銀行の特定の担当者の時のもので、以前のように何が何でも中小企業への無担保ローンの残高を増やさないといけないような状況下は別として、そこそこ無担保ローンの残高も増えた現状では、以前にも増して厳しい審査がなされていますので、粉飾決算で融資を取り込むことは、ほぼできないとお考えいただきたいと思います。

粉飾している決算書の多くは、大体の場合売上高を増額しています。ただ流動資産の部が異常なスタイルになることが多く、消費税の申告書との照合をすると、ほとんどの場合は売上のかさ上げを発見できます。他にもいろいろチェックの方法があるのですが、これを参考に粉飾の参考にされる懸念がありますので、詳細は止しておきますが、詐欺罪が適用される法律違反でもありますし、ともかく融資を成功できる可能性よりも、未来を失う危険性のほうが圧倒的に高いので、絶対に粉飾決算はお止めいただきたいと思っています。

債務超過であっても、ある都銀は、税理士のチェックシートなどを添付することを条件に案件によっては融資をするサービスをしていますし、税金の未納があっても、消費税の未納はだめですが、所得税の未納であれば、案件によっては融資につながることもあります。

以上のことから、リスクが非常に大きい粉飾決算には絶対に手を出さないで下さい。資金調達の方法はけっこういろいろありますので、コンサルタントなどにご相談されたり、研究されたら良い方法が見つかると思います。



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