コンサルティングの現場から 地方間格差 | 思うように資金調達ができない方へ

コンサルティングの現場から 地方間格差

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今日は公的資金の資金調達のことを書こうと思っていましたが、昨日ご相談に来られたお客様が、典型的な資金調達の一つの問題点を語る案件であったので、今日は東京以外の地方の会社の資金調達の難しさについてお話をしたいと思います。

ある地方でスポーツクラブを数件経営している社長さんの案件です。
スポーツクラブの施設建築資金として20億円ほどの融資を、地元の銀行、信金、ファイナンス会社など7ヵ所から受けていて、この融資の融資期間が設備資金にもかかわらず、3~7年と短いため、元金返済をすると、日常的に資金繰りが忙しく、融資期間を長く貸してくれる金融機関への借換を、できれば一つか二つの金融機関に集約できるように手伝って欲しいと言う依頼でした。

決算書を拝見すると、売上も利益も増加傾向で、融資期間を長くすることで、安定した経営になることは一目瞭然で、希望されている借換はぜひした方が良いと私も確信できる案件です。

このスポーツクラブが東京23区に立地していれば90%、首都圏・大阪・名古屋で80%、京都・神戸・福岡などの一等地で50%くらいの確率でお手伝が可能で、我々のビジネス的な本音を言えば「美味しい」案件と言えます。

ところが今回の案件のスポーツクラブの所在地が決して人口が多くない、典型的な地方都市、それも都市銀行の支店も一つもない都市に立地しているため、現時点のままではかなり難しい、確立で言えば10%以下の確率でしか、お手伝いのできない案件となってしまいます。

まずこのような案件の場合は、財務内容や事業内容を参考にして、大体次のような順番で資金調達の可能性を考えます。

①既存の金融機関を整理する形で、条件が良い(融資期間が長い)1つか2つの金融機関に集約できないか? 
今回の場合は既存の金融機関が全て、金融機関自体の業績が悪いので×。

②新規の金融機関で借換ができないか?
まず都市銀行を検討。
今回のような場合は都市銀行を検討します。
一部借換とは言っても、本件では最低 2億円程度以上の融資でないと意味がないので、ボリューム的に新規だと地銀や信金では難しく、都市銀行でできないかを検討します。
もちろん20億円全額の借入ができれば満点ですが、長期間での借換を前提に、まず都市銀行との接点を持てないかどうかを検討します。
今回は、スポーツクラブの所在地が、微妙に都市銀行の店舗から遠いので、この会社の規模から言って90%×の可能性が大です。

③不動産担保ローン専門のファイナンス会社で検討する。
不動産担保ローン専門のファイナンス会社からの借換が、このような案件の場合の本命です。理由は、このスポーツクラブの場合も、装置産業であるため、固定資産の額が過大で、自己資本率が高くなく、一部短期借入金で固定資産を購入しいる部分もあるので、低い格付けになると思われます。
ですから、会社の格付けよりも不動産価値に重点を置くファイナンス会社からの借換が非常に現実的な方法です。
ところが、「不動産の見方」でも書きましたように、東京一極集中のため、今回の所在地では、担保評価が非常に低く、さらに融資の可能な額の掛け目も低いため、現在の融資の借換のためには、評価不足の分に対して現金の用意が必要となり、今回の場合は×。

④他のファイナンス会社を検討
銀行と同様な審査基準で案件を検討するファイナンス会社への打診になるのですが、銀行より若干とも格付けの基準が甘いものの、このスポーツクラブの財務内容だと確率は10%未満だと思われます。
このファイナンス会社は金利も地銀並みに金利も低いし、全国どこの地域でも原則対応可能なのですが、地銀や信金以上の財務内容を求めるので、多分難しいと思われるわけです。


⑤商工ローン系ファイナンス会社
このあたりになると、可能性は高くなりますが、金利が15%程度、おまけに社長以外の保証人をつけろとか、共同担保をあるだけ出せとか、かなり悲惨な条件になってきますので、むしろ現状のままの方が良いので、借換には不適切な融資と言わざるを得ません。

このように、結局このスポーツクラブの社長さんは、地方都市に本社と店舗も立地しているだけで、資金繰りを劇的に改善できる機会をなくすことになる訳です。

少し長くなりましたので、次回もこの続きを、特に大した手段は提案できないのですが、それでも地方に本社がある会社に何件も数億の無担保融資をお手伝いした経験がありますので、お伝えしたいと思います。