思うように資金調達ができない方へ -2332ページ目

誇大妄想 社長

2月25日


今日は失敗した経営者の話の続きです。

資金調達コンサルティングの仕事をしていると、普段めったに会えない方々と会うことがあります。失礼とは思いますが誇大妄想としか思えない方々の話です。

・オゾン層の破壊による被害から人類を守る人工石の開発事業
・環境にやさしい自動車の代替燃料の製造販売事業
・環境破壊を守る自動車マフラーの開発製造販売事業
・末期癌も治る治療薬の開発製造販売事業
・ダイオキシンの革命的処理システム開発製造販売事業
・深層海洋水を使った海水魚養殖システム
・某国の鉱石資源の独占開発事業

内容が分かればお断りするのですが、それでも、上記のような事業の資金調達の依頼が、顧客からの紹介など、毎月1件程度はあります。

共通しているのは、だいたい次のようなことです。
・事業化するまでに時間と多額の資金調達が必要であるが、事業化すると革新的であるので、必ず大成功して1年に数千億円以上の利益が出る上、何よりも人類に多大な貢献ができる。
・資金調達の目処が全くない上、当面必要な資金の期日が近づいている。
・著名な学者や政治家も強力にバックアップの約束をしてくれている。
・技術や商品は世界唯一のものであるが、その権利はまだない。

このようなことが、不思議なぐらい、上記のほぼ全ての案件で共通しています。

もちろん実現できるだけの、人、物、金などの経営資源が用意できるのであれば、確かにビジネスチャンスだと理解もできます。
大手の上場企業のように3つの要素が豊富にある場合であれば可能かもしれませんが、全ての要素が全くないのにもかかわらず当事者が真剣になっているので驚いてしまうわけです。

もちろんご相談いただく会社が資金調達の出来る条件を持っているのかといえば、100%どころか120%無理な状況であることがほとんどです。極端な例ではご相談を受けた翌週に不渡り手形を出した会社もありました。

たとえ話をします。
あなたは、友人がすごい発明をしました(他に同様な発明があるかどうかは未確認)。ただ友人が資金も手立ても分からないので、事業化できず困っていたとします。
話を聞くと、まず開発準備に2年と5億円、更に実験に1年と5億円。それから商品化するのに工場を建築したり、営業拠点を造ったりで1年と10億円必要で、この段階から一挙に巨額の売上と利益が出ると予測したとします。
整理すると、事業化までに4年の期間と20億円の資金が必要であるが、5年目から数十億いや数百億円儲かるといった状況です。

現状あなたの会社は、競争の激化で売上も利益も低下傾向で、当面用意できる資金は500万円とします。

あなたはこの事業に参入しようと思われますか?
通常はあまりにも現実的でないので、面白そうに思っても、多分おやりにならないと思いますし、私もやりません。

でもこのような空想に近い事業の成功を求めて真剣に活動している方が、けっこういらっしゃるのも事実で、今月も1件このような案件のご相談がありました。
地方からわざわざ飛行機で来られて、関係各所と弊社をご訪問された訳ですが、よくよく聞いてみると、3年間も資金調達でいろいろな30ヶ所以上のところに打診したり相談していらっしゃるようでした。
この間ご本業は休業状態で売上はほぼゼロらしく、私はまたか・・・・・と思う以外の感想を持ち得ませんでした。

何度か書いてきたように、資金調達の条件をクリアしない資金調達は100%できないので、このことをご理解していただくように話をしましたが、(今回もそうでしたが、これも共通して言われるのが)「ビジネスチャンスが理解できないのか」と逆にお叱りを頂いたり、「この事業を分からない金融機関が馬鹿だ。」「日本はおかしい。」的な回答でした。

このような状態ですから、ご本人に言っても怒るだけなので、遠まわしにお話をしますが、「なぜあなたでなければこの事業は駄目なのか?誰がやっても成功の可能性は本当にないのか?この事業をやるだけの経営資源を本当に用意できるのか?」と言った視点を検討して、合理的な回答がでない事業への参画はリスクが大きすぎるからお止めになるか、もっと現実的なビジネスモデルができないかを検討していただきたいとお話をしたいのですが、思い込みが強く、聞く耳を持たないので本当に困りました。

一方成功する方の特徴はこの対極にあり、その時々の人・物・金+情報の経営資源に見合った、創業時ですと、ニッチでマーケットは小さいが、他者との競合がないため利益率の高いような事業に、実に良いタイミングで参入していることが言えると思います。

次回はそろそろ成功された経営者の問題にも触れてみたいと思います。

条件の満たない資金調達は絶対にあり得ない

2月24日

資金調達を銀行やファイナンス会社からの融資に限った場合、以前書いたように、3つの要素の各条件のいずれかをクリアしないと絶対に融資を受けることはできません。

その3つの要素とは次の通りです。
1.直前3期と直近の財務内容の信頼性。(格付け)
2.土地など担保の信頼性。
3.代表者及び連帯保証人の信頼性。

今日も関東の地方都市に拠点を置くパチンコホール経営者と面談をさせていただいたのですが、(今日のことでリアルすぎるため詳細は書けませんが)、要するに現時点では、上記3つの要素をすべてクリアできない状況でした。

ところが「今年の5月にオープンする新しい店舗開設のために、数千万円の融資をどうしても受けたい。どうしても調達できないと困る。」というご相談でした。

土地などの担保や社外の保証人は準備できないと言うことですから、財務内容を良くする以外に、金融機関からの借入はできないので、2年くらいかけて会社の組織と財務内容の改善をすすめ、5月の新店オープンのための借入は、社長の人脈の方や取引先からの調達か、あるいは割賦支払いなどでしのぐしかないとお伝えしました。

この社長、付き添いの顧問税理士の方、社長の相談相手の大手生保の中間管理職の方の3名は、社長のお知り合いからの調達と不動産を担保提供する方を探すと言うことでお帰りになりましたが、社長の表情は「これらのことは無理だ」と語っていました。

これからがよくあるケースで、違うコンサルタントや人脈の限り手を尽くして融資をしてくれる金融機関を探し回わる方が多いのです。

意地悪で言うのではありませんが、無理なものは無理で、短期間に現状の財務内容のまま、担保なし、保証人なしで貸す金融機関は100%ないというのが現状なのです。

ところが金融機関を探し回っていると、「十分可能です」というコンサルタントや先生(何の先生か?ですが・・・)が必ず現れてきます。

話を聞いた後「やはり無理です」と、無理なことを無理と言ってくれるコンサルタントなら良いのですが、次のようなうそ(場合によってはコンサルタント自身ができると信じている場合もあります)を言うのが意外と多いので要注意なのです。

2種類いまして、権威型コンサルタントと、無能じらしコンサルタントと、この融合型もいます。

◆権威型コンサルタント
・政治家、著名人、銀行のトップと親しい人から金融機関に言ってもらうと一発で融資が決まる。
・政治団体、組合、宗教団体が団体交渉力で無理な融資でも、融資を受けるようにしてくれる。

この権威型の多くは、先にお礼、運動費、入会金、加盟料の名目で数万円~数百万円の着手金的な支払いが必要であったり、融資ができた場合には、法律違反の高額な、場合によっては融資額の30%も、更に最悪な場合は、領収書発行なしの条件で手数料の支払いを求められたりすることがあります。
ほぼ融資が実行されることはなく、結局のところ着手金を商売としているとしか思えないことが多いので要注意です。

◆無能、じらしコンサルタント
権威型のようにお金を先に取ったりせず、まじめに銀行に打診したりはするのですが、持ち込む金融機関の数が少なかったりするため、全く金融機関のニーズと違う案件を持ち込んだり、もともと無理な財務内容なのに持ち込むため、融資は99%出ることはありません。
ただこの手の方は、駄目と言う結論が分かっていても、なぜかもったいぶると言うか、クロージングをしないで、「検討中」「検討中」と年中言ってる方が多いので不思議です。これも大変迷惑な話ですので要注意です。

いずれにしても社長はできるはずのない融資を待ち続けてしまい、事業の予定を大幅に狂わしてしまうのです。
ひどい場合(実話です)権威型のコンサルタントから融資実行が決定したと言われ、この融資をあてにして、土地購入の契約締結と手付金の支払いをしてしまい、融資がうそであったため、手付金1億円をなくした方がいます。この方の会社はこのことが引き金になって半年後に倒産してしまいました。

もちろん、できもしない融資を「できる」というコンサルタントは一番悪いのに決まっていますが、このようなコンサルタントにつけ込まれる社長の責任も大きいと思います。

資金調達は、無理なものはどこに持って行っても無理ということを肝に銘じていただき、冷静に次善の策をお考えになり、騙されて着手金を取られたり、経営判断を間違わないようになさって欲しいと思います。

資金調達で怪しいと思われた場合は、お気軽にコメント下さい。少しはご参考になるお話をさせていただけると思います。

なぜ?銀行は保管証明を発行したがらない

2月23日



今日は、本来は、昨日の続きのコンサルタントについてもう少しお話をしたかったのですが、明日需要な顧客のコンサル会議があり、あらかじめお客様よりお送りいただいた、財務諸表と事業計画書の下調べをする必要があり、今回は少し手抜きをさせていただきます。

手抜きといっても、内容はいつも銀行に対して疑問と不満のある、会社設立時の資本金(出資金)の保管証明書の発行の問題です。

会社にお勤めの方のように創業者と認められる場合は、皆様よくご存知の1円の資本金でも設立が可能な、確認株式会社あるいは確認有限会社で起業が可能です。

ただ会社経営者が何らかの理由で別に会社設立する場合は、確認株式会社及び有限会社の設立はできず、通常の有限会社であれば出資金300万円、株式会社なら資本金1000万円を用意して設立をしなければなりません。

たとえば既存の会社を整理し、新規の会社を作るような場合、事業再生案件では良くあることなのですが、資本金などを準備するだけでも大変であるのに、更に大変なのが、「資本金や出資金がありますよ」と、登記するときに必ず必要になる払込金保管証明書の発行を、なぜか銀行、信金はスムーズに発行しないところが多く、この段階で会社設立が頓挫し、大幅にスケジュールの遅れを余儀なくされることがあります。

以前から銀行は発行したがらない傾向がありましたが、最近は信金でも「審査が必要である」「実績を見てからにしたい」とか言って、紹介者がない場合には発行を実質上拒否することが多くなっています。

この現象は、ひょっとすると、弊社がある東京および近郊に立地する金融機関のみのことかもしれませんが、起業をどんどん進めて経済活性化を図る必要がある時なのに、逆行する重要な問題でないかと常々憤っているところです。

私も数多くの銀行とお付き合いをさせていただいていますので、当然親しい銀行員も多く、弊社にも銀行出身の者がいますので、「なぜこんなに保管証明書を出したがらないの?」と質問して、なるほどと合理的な回答を聞いたことがありません。

マネーロンダリング、カルト的な宗教団体やテロ支援会社などなど、いろいろな理由を聞くのですが、会社設立を促進して経済の活性化を図る、また金融期間にとっても新規顧客を獲得できるビジネスチャンスなのに、なぜ発行を渋るのか、私は全く?です。

枝葉末節な問題と思っているのかもしれませんが、小泉首相や竹中大臣からも、この件についての発言を私は聞いたことがありません。

これはじっ魂にしている銀行員から聞いたのですが、「面倒くさい割りにメリットがない」あーびっくり、いやになってしまいますね。

なんで?と、コンサル業務をしていて、本当に首を傾げたり、憤慨したりすることが多々ありますので、ブレイクタイムと言う新しいテーマを設けて、時々常日頃の疑問に感じることを書いていきたいと思います。

明日は前回の続きを書く予定です。
また良かったら読んでくださいね